第12回(平成26年度)児童・生徒科学賞受賞校概要

○小学校の部 上野原市立上野原小学校
 「学校林を活用した環境教育活動」

受賞者(上野原市立上野原小学校)の写真

 上野原小学校の学校林は、学校区在住の水越八重女史により寄贈された山林300万平方メートルがもとになっている。昭和4年12月に「上野原小学校基本財産林管理規定」が制定され、以来上野原小の基本財産として管理することとなった。現在は4つのゾーンを設定し、野外活動や環境教育のフィールドとして活用している。具体的には、(1) 自然観察ゾーン(現状に全く手を加えずに、高学年を対象とした樹木・昆虫等の生態観察のためのエリア)、(2) 自由遊びゾーン(児童が地形や樹木を利用した自由遊びができるエリア)、(3) 植樹活動ゾーン(教育活動に応じて植樹・育樹活動を行うエリア)、(4) 憩いのゾーン(状況に応じて森林浴等を楽しむエリア)を設定し、教育活動を展開している。活動の際は、地域の自然観察指導員や地元の大学の学生などとともに、自然に親しむ活動を展開しながら、それぞれの学習課題に応じて、課題解決の場を設定し、活動の成果を学習発表会等で保護者に向けて発信している。


○中学校の部 甲州市立塩山中学校 科学技術部
 「科学実験および水ロケット製作活動」

受賞者(甲州市立塩山中学校)の写真

 塩山中学校の科学技術部は、文化部の一つとして位置づけられ、例年およそ15名の生徒が所属し、活動をしている。主な活動は科学実験やものづくりであり、定期的、継続的に活動している。その成果を学園祭や県理科自由研究発表会で発表するなど、積極的に発信をしてきた。また、平成22年度に、ペットボトル水ロケット世界大会(JAXA主催)に出場した生徒がおり、その取り組みを平成23年度より部活動の活動内容の一つとして引き継ぎ、世界大会出場をめざし、活動してきた。平成24年度には、国内予選において2次審査へ進むことができ、世界大会出場は逃したが、特別奨励賞を受賞した。
 また、「宇宙の学校」(JAXA主催)にボランティアとして、定期的に参加している。参加者である親子の活動を助けることで、自主性を伸長させ、宇宙へ興味関心を高めるとともに、科学技術に対する創造性豊かな心を育むことをめざしている。主な活動は以下のとおり。

  1. 科学実験、ものづくり
  2. ペットボトル水ロケット世界大会への取り組み
  3. 「宇宙の学校」ボランティア参加

○高等学校の部 山梨県立都留高等学校 生物化学部
 「ナメクジ粘液分泌特性と粘液中の微生物」

受賞者(山梨県立都留高等学校)の写真

 ナメクジの粘液分泌特性の観察から、ナメクジに塩をかけたときの反応が浸透現象ではなく、能動的な行動であることを明らかにした。また、粘液中の繊毛虫の観察や細菌や真菌類の培養実験から、粘液中に特定の細菌、コリネバクテリウムが常在しており、この細菌が粘液の弱アルカリ性の環境下で真菌類の増殖を抑制している可能性を見いだした。さらに、粘液が微生物の生息場所を提供し、ナメクジ体表上に粘液から始まる食物連鎖が存在することを明らかにした研究である。



○私立学校の部 山梨英和中学校・高等学校 自然科学同好会
 「廃グリセリン処理物からの酵母による油脂生産」

受賞者(山梨英和中学校・高校)の写真

 自然科学同好会では、廃食油からバイオディーゼル燃料を生成する研究を進めてきた。その際に副成する廃グリセリンを、産油酵母であるリポミセスの炭素源として利用し、油脂を再生産するシステムの構築を試みている。一般に、廃グリセリンは焼却処理や土に埋めるなどの処理をし、有効活用されていないのが現状である。コスト面から考えれば、このような処理が妥当かもしれないが、より広い視野で地球環境のことを考え、今回の研究を始めた。資源の乏しい日本であるからこそ、エネルギー源である油脂を再生産することに意味があると考えたのである。今は基礎研究を始めたばかりだが、この研究が実用化されることを大きな目標としている。今回は、まずリポミセスのどの菌株が炭素源としてグリセリンが使えるのか、菌株によって生産する油脂の量に違いがあるのか、また、廃グリセリンをどのような処理をすればリポミセスが利用できるのか、などを調べた。平成26年9月に、つくば国際会議場において行われた公益社団法人環境科学会2014年会でポスター発表を行った。多くの環境科学者の先生方に高評価をいただき、たくさんのアドバイスもいただいた。今後も県内外の研究発表会で発表を行う予定である。