第13回(平成27年度)児童・生徒科学賞受賞校概要

○小学校の部 甲州市立神金小学校
 「学校林を活用した自然学習活動」

受賞者(甲州市立神金小学校)の写真

 神金小学校林は、昭和21年、学校基本財産造成のため、カラマツ・ヒノキを植樹したことに始まった。その後、昭和28年に隣接する中学校林を統合して管理・造成してきた。昭和45年4月に「神金PTA林(学校林)管理規約」が制定された。現在は、PTA林(学校林)として継承し、毎年親子共同による枝打や間伐作業を行い、自然観察体験林として活用している。特に、緑の少年隊活動や総合的な学習で、緑化の推進活動や森林づくりの体験学習、自然観察や環境学習の場として活用している。
 昭和45年からの活動として、親子で植林や下草刈り、枝打や間伐作業、鹿の食害防止用テープ巻き作業、巣箱かけを行ってきた。近年では、作業終了後、間伐材を利用した工作活動、学校林観察会、ネイチャーゲーム等を親子で行っている。3年生から6年生は、総合的な学習の中で、4月から計画的に自然環境の保護についての課題を設定し、教育活動を展開している。それらの活動の集大成として、毎年6月の第1日曜日に、学校林自然学習会としてこれらの活動を行っている。
 自然学習会には、全家庭の保護者が参加し、親子で自然保護の大切さを体感している。また、参加している保護者も、小学生時代に学校林活動を体験しているため、親子3代にわたっての伝統的な活動にもなっている。


○中学校の部 甲斐市立双葉中学校 科学部
 「六反川水質調査」

受賞者(甲斐市立双葉中学校)の写真

 双葉中学校の科学部では、様々な活動の中で、環境調査を継続研究として行っている。今年度で9年目となる継続した研究活動である。地元の河川である「六反川」の水質調査を、水生生物指標を基にした水質判定で行っている。きれいな水に生息するサワガニや、ややきれいな水に生息するカワニナ類などを数多く確認している。また、調査結果は県に報告しており、河川水質データに活用されている。さらに、調査結果の経年変化から考察を行っている。
 併せて、水生生物や環境などの学習も行っており科学や環境に意識の高い生徒の育成を行っている。


○高等学校の部 山梨県立甲府南高等学校
 「SSH事業における課題研究(最速降下曲線の研究、冷却による水溶液の分離ほか)」

受賞者(山梨県立甲府南高等学校)の写真

 平成16年度からのSSH事業において、全校をあげて課題研究に取り組んできた。その取り組みの成果が平成26年度に顕著に表れた。

  • 全国総文祭自然科学物理部門優秀賞
    物質が最も速く転がる曲線「サイクロイド曲線」のコンピュータシミュレーションと、様々な曲線や直線の模型を作製し、玉が転がる速度を測定する実験を行い、その違いを比較・分析した。
  • 「物理チャレンジ2014」銀賞受賞
    全国約2,000名の1次選考中、上位100名の本選に残り、本選において金賞の上位6名に次ぐ、上位12名にあたる銀賞を受賞した。なお、課題研究では「冷却による水溶液の分離」(食塩水およびエタノール水溶液を冷却し、凝固するときの濃度の分かれ方を調査)に取り組んだ。


○高等学校の部 山梨英和中学校・高等学校 自然科学同好会
 「富士北麓のササラダニ類の種多様性調査」

受賞者(山梨英和中学校・高校)の写真

 富士山北側最後の噴火によって北麓が形成されてから1000年以上が経過した。2013年にユネスコの世界文化遺産に登録された富士山の生態調査を実施し、種多様性の維持のために必要な基礎資料を得ることを目的とした。仮説は「富士北麓に生息するササラダニ類は高い多様性をもち、標高の近い地点は類似性も大きいだろう」とした。スバルライン沿いの各合目に調査地点を7つ設定した。調査点は道路から30m入った森林土壌を縦30p、横30p、深さ10pの土壌コドラート調査を実施した。種の同定と個体数集約を経て、バイオームのダニの区分、各地の優勢種、類似度とクラスター分析によるデンドログラム作成、各地点間の環境条件と個体数、回帰直線による因果関係の解析を行った。富士山北麓のササラダニ類の種多様性(種類数、個体数、密度、多様度、類似性)について推計をすることができた。北麓全体の多様度は里山に比較して大きく、標高の近い地点間の類似度は互いに高い値を示した。ただし、調査地点のうち0合目と青木ヶ原の値は特異な数値を示した。それは0合目は植生の優占種であるアカマツ、青木ヶ原はヒノキによるとし、溶岩と植物による黒ボク土形成の結果が影響していることが示唆された。