第14回(平成28年度)児童・生徒科学賞受賞校概要

○小学校の部 甲斐市立竜王小学校 6年
 「森からみえる・竜王遺産」

受賞者(甲斐市立竜王小学校)の写真

 竜王小学校の6学年では、継続して総合的な学習の時間などで「環境学習・地域学習」として竜王地域と他地域を比較する中で、自分たちの住む竜王地域について理解を深めてきた。
 4年生時には、総合的な学習の時間で「ゴミ調査隊」としてくらしの中のごみと水に着目し、調査、発表活動を行ったり、生活と自然について学習を始めた。
 5年生時には、この学習を発展させ、ペットボトル筏をプールに浮かべた後、これまでの経験をもとに芯材に使ったり割り箸の処分方法を子どもたちが考えた。それをきっかけに東京大学大学院斎藤馨教授らとTV会議で交信を行い、割り箸から木へ、木から森へ関心を広げていった。その後、山中湖村にある東京大学大学院の演習林「富士癒しの森」での体験活動をもとに、全国3地点の演習林の画像を比較し、森から感じたこと、もっと知りたいことをもとに調査テーマを決めた。調査開始後は、時折、iPadアプリのFaceTimeを使って東京大学大学院斎藤馨研究室の大学院生との意見交換を行いながら調査の方法を確かめ、小学生の視点で、森林の大切さや紅葉の仕組み、森に生きる動物・昆虫などについて調べていった。中間発表会では、発表内容について斎藤馨教授らに改善点を指摘してもらい、さらに調査内容の精度を上げる活動を進めた。1〜2月に発表会を開催し、保護者や大学院生等に調査結果をiPadのアプリ(Keynote)を使って発表した。
 6年生時には、さらにこの活動を継続させ、東京大学サイバーフォレストHPのライブカメラが設置されている岩手県大槌町の中学生と交流をもった。お互いの故郷について質問し、その内容について調べ発表することで、他の地域を知るとともに自ら生活している地域の良さを再認識した。また、5年生時「森からみえる」の研究成果を発表し、森の大切さ、さらに身の回りに当たり前にある環境の大切さに気付くことにつながった。今後も交流を深めていく予定である。


○中学校の部 山梨大学教育学部附属中学校 科学部
 「山梨の特産品であるブドウについての研究」

受賞者(山梨大学教育学部附属中学校)の写真

 山梨大学教育学部附属中学校の科学部では、地域の特産品を理解し、地域を支える産業に着眼することを目的として、ブドウの苗から育て、様子を観察し、定点カメラ等で記録し考察してきた。一次的なものではなく、長期にわたる観測を行うことで、より深い理解を目標としている。
 比較実験として1種類のブドウだけでなく、2種類以上のブドウの24時間・年間定点観測を可能にする機材を設け、温度・湿度も計測する中で成長の様子を科学的に比較し理解を深めた。ブドウについて学んだことを部活動内で発表し知識を共有している。


○高等学校の部 山梨県立巨摩高等学校 生物地学部
 「山梨県内のゲンジボタルの分子系統学的解析」

受賞者(山梨県立巨摩高等学校)の写真

 山梨県立巨摩高等学校の生物地学部では、平成25年度から地域のゲンジボタルの保護活動として、河川の清掃を始めた。
 ホタルの養殖・放流をするにあたり、遺伝子攪乱が危惧されたため、養殖元と放流先の川のホタルの遺伝子解析を行った。その結果、2つの川のホタルの遺伝子は一致した。さらにこれらのホタルの遺伝子配列と、日本DNAデータバンクに登録された既存のゲンジボタルの配列を比較したところ、既存の種内集団とは異なる新たな集団である可能性が示唆された。
 そのため、南アルプス地域を中心に県内22地点のホタルについて、遺伝子解析を行った。その結果、10地点のホタルが既存種内集団と異なる新たな集団であることが分かり、この集団を「南アルプス集団」と名付けた。今後も保護を続けていく。